膝の複数靭帯損傷における早期再建と遅延再建の比較
膝の複数靭帯損傷(MLKI)は患者の生活に大きな影響を及ぼす重篤な怪我であり、手術治療が必要です。しかし、治療のタイミングに関しては意見が分かれています。早期(怪我後6週間以内)と遅延(怪我後12週間から2年)再建がもたらす結果について比較が行われています。
研究概要と方法
この研究は2007年から2019年の間にMLKIで手術を受けた患者131人を対象に行われました。各患者は、手術が早期に行われたグループ(75人)と遅延して行われたグループ(56人)に分けられ、術後12か月以上の追跡調査が行われました。評価項目には、患者のQOL(生活の質)や関節の柔軟性、変形性膝関節症の発症率などが含まれます。
主要な結果
術後の生活の質(MLQOLスコア):早期と遅延のどちらであっても、生活の質に関する4つの分野(身体的障害、精神的障害、活動の制限、社会的関与)に大きな違いは見られませんでした。
膝の柔軟性と関節の可動域:早期手術群は、遅延群に比べて可動域が制限されやすく、より多くの患者が麻酔下での関節操作(MUA)が必要でした。一方で、遅延群は可動域が広く、関節の柔軟性が比較的保たれていました。
変形性膝関節症(OA):早期再建が行われた患者では、変形性膝関節症の発症が遅延群に比べて少なく、長期的には早期再建がOAの予防に効果的である可能性が示唆されました。
早期再建と遅延再建のメリット・デメリット
早期再建のメリット:膝を早期に解剖学的な正常位置に戻し、長期的な変形性関節症のリスクを低減する可能性がある。
早期再建のデメリット:関節が固まりやすく、可動域が制限されやすい。MUAが必要になる患者が多い。
遅延再建のメリット:関節の柔軟性を保ちやすく、長期的な可動域が確保されやすい。
遅延再建のデメリット:関節の変形性関節症リスクが高くなる可能性がある。
結論
膝の複数靭帯損傷における再建手術のタイミングには、それぞれのメリットとデメリットがあります。早期再建は変形性関節症のリスクを減らせる一方で、関節が固まりやすく、術後にリハビリが必要になる可能性があります。遅延再建は柔軟性を維持しやすいですが、変形性関節症のリスクがやや高くなる傾向があるため、患者ごとに慎重な判断が必要です。
Hoit G, Chahal J, Khan R, Rubacha M, Nauth A, Whelan DB. Early Compared with Delayed Reconstruction in Multiligament Knee Injury: A Retrospective Propensity Analysis. J Bone Joint Surg Am. 2024 Aug 22. doi: 10.2106/JBJS.23.00795. Epub ahead of print. PMID: 39172809.